定年退職した後にたくさんの方々が直面する悩み……それは、「健康保険の選択」です。退職後は勤めていた企業での健康保険から外れ、自分で健康保険加入の手続きを行わなければなりません。
しかし、多くの方が今まで会社から保険料を給与から天引きされていたため、知らない方が多いでしょう。定年退職後の健康保険選びに困らないために、ポイントを解説します。
目次
定年退職をするとしなければいけない健康保険の手続き

サラリーマンが定年退職すると、4つのどれかを選んで健康保険の手続きをしなければなりません。ここでは、一つ一つ説明していきます。健康保険は基本的には74歳まで支払うことになり、75歳からは新たに「後期高齢者医療制度」へ加入し、別途保険料を負担していきます。
加入していた健康保険を任意継続する
定年退職すると個人は加入資格を喪失しますが、任意の申し出をすることで勤務中に加入していた健康保険に継続加入することができます。
気になる保険料ですが、退職時の標準報酬月額に在住の都道府県の保険料率を乗じた額が保険料となります。保険料の上限として標準報酬月額が28万円と設定されているため、最大でも28万円に都道府県の保険料率を乗じた額が保険料となります。
ただし、在職中は会社が保険料の1/2を負担していたため、在職中よりは保険料額が高くなります。
国民健康保険に加入する
定年退職後は国民健康保険に切り替えることができます。国民健康保険は、都道府県と市区町村が運営する公的医療保険制度で自営業者や退職者などほかの公的保険に加入しない人を対象とする健康保険です。
保険料は各市区町村によって算出方法が違うため、市区町村の国民健康保険窓口に問い合わせると良いでしょう。
子(家族)の被扶養者になる
家族の中に健康保険組合や協会けんぽに加入している配偶者や子どもがいれば、健康保険の被扶養者になることができます。この方法がもっとも金銭的に負担は少なくて済みますが、一定の条件を満たす必要があるため、ポイントを押さえなければなりません。
1つ目は年収が130万円未満、60歳以上は年収180万円未満であること、2つ目は収入が扶養される家族の収入の1/2未満であること(同居の場合)、3つ目は3親等内の親族であること、被扶養者が退職時に収入が高かった時は注意が必要です。
被保険者と関係の近い父母や子、配偶者は別居していてもかまいません。また、60歳以上の場合は老齢年金も収入に含まれるので注意しましょう。
再就職先の健康保険に加入する
定年退職後に別の会社に再就職した場合は再就職先の健康保険に加入できます。
結局、健康保険選びはどう選べばいいの?

健康保険選びは個人の条件によって大きく異なるので、選ぶポイントを説明します。
まずは、家族の扶養条件に当てはまるかを確認しよう!
家族の健康保険に加入することができれば、保険料は支払う必要がないほかに、扶養に入れた家族も扶養が増えることで健康保険料が上がらずに済むというメリットがあるため、最も良い方法は家族の扶養に入るのが一番良いでしょう。
しかしこの方法は、被扶養者の厳しい一定条件を満たす必要があります。先ほど説明をしましたが、年収要件が60歳未満は130万円未満、60歳以上は180万円であること、さらに扶養される家族の1/2であることが条件となり、公的年金や失業給付も含まれるため、退職をした年に扶養条件を満たすことは難しいです。
加入先によっては被保険者との続柄や同居要件など厳しい条件を設定している場合もあるので、家族の被扶養者要件を確認し、該当しなかった場合には他の選択肢も検討する必要があります。
任意継続と国民健康保険はどちらを選ぶのが良いのだろう?
在職中の健康保険を任意継続するか、国民健康保険に切り替えるかを選ぶのは個人の所得によって判断することが大切になります。
国民健康保険は、前年の所得が算出条件となるため、退職前の収入が多いほど保険料の支払いも多くなるのに対し、任意継続被保険者は在職中の保険料とほぼ同額が適用されます。
しかし任意継続の保険料は、退職前には会社と個人で折半していたものを退職後は被保険者が全額の保険料を支払うため、給与明細で引かれている健康保険料をだいたい2倍したものを支払うようになります。
国民健康保険と任意継続による保険料でどちらが低く抑えられるかは、ケースバイケースの為、個人によって違います。退職前に市区町村の国民健康保険窓口に一度相談し、健康保険料を算出してもらうと退職手続きの際にどちらを選ぶかを人事に聞かれた時にすぐに返答ができるため退職の手続きがスムーズにいきます。
しかし、一般的には退職後すぐは任意継続被保険者となり、加入期間の2年間のうちに収入が少なくなった時点で国民健康保険に切り替える方が多いようです。国民健康保険は被扶養者という概念がないため、被扶養者がいる場合は家族の人数分の保険料を負担しなければならないので保険料が高くなる場合があります。
健康保険の切り替え手続きは何日以内?

任意継続の場合
退職日の翌日から20日以内に手続きをする必要があります。加入条件は退職前に引き続き2か月以上の被保険者期間があることになりますが、よほどの事がない限りはこの条件は満たせるでしょう。
メリットは保険料の支払いが安く済むことです。任意継続被保険者になると、再就職した場合や死亡した場合、保険料を期日までに納付しない場合以外の理由では途中でやめることはできません。手続きは会社の人事に必要な書類をもらうと良いでしょう。
国民健康保険に加入する場合
退職日の翌日から14日以内に手続きをする必要があります。市区町村の国民健康保険窓口に会社からもらう退職証明書か健康保険資格喪失証明書を提出する必要があるため、退職前に退職証明書や健康保険資格喪失証明書を出してもらえるよう人事に掛け合うと良いでしょう。
家族の扶養に入る場合
退職日の翌日から5日以内に手続きをする必要があります。配偶者や子どもが健康保険に加入していて、生計を維持してもらっている場合は扶養家族になります。
加入するのに健康保険により異なりますが所得証明書や住民票が必要となりますので退職前に準備をしておくと退職後にスムーズな処理をすることができるでしょう。
保険の内容を見直しましょう!

定年退職をするころには、住宅ローンなどローンの支払いも終わり、子どもが独立すれば自分が死亡したときの家族への補償額も少なくなります。
生活や医療費の確保など、長生きに向けた対策が必要となり、老後の生活は経済状況と健康状態が大きく異なってくるので第2の人生を安心して送れるように保険を上手に使いたいところです。そんな保険料も見直す必要があるかないかをここでは説明します。
死亡保険の補償は必要な額なのか?
今までは子どもと同居で家族が複数人で生活していたものが、夫婦2人中心の生活になりますが、各家庭の状況によって死亡保障に新たに加入する必要が出てきます。その額は配偶者が年金を受給するまでの生活費用や葬儀費用、相続への備えなどになります。
生活費用と葬儀費用は特にどのくらいと決まっているわけではなく、特に高額な費用を準備する必要もないでしょう。贅沢をしない限り、最低限の生活が数年間できる費用を準備すればよいと思います。その費用は数年間だけ定期保険に加入しておけば大丈夫です。葬儀費用も絢爛豪華な葬儀をする必要がないと思いますので、葬儀費用ぐらいの金額を受け取れる終身保険を準備しておけばよいでしょう。
相続の費用ですが、各家庭の資産状況によって大きく異なりますが、持ち家の方、預貯金や株式、債券など有価証券がたくさんある方は注意が必要です。資産が一定額以上の方には相続税が課税されますが、もちろん控除される金額もあります。相続税の控除額は
・基礎控除額は3,000万円+法定相続人の数×600万円
となっています。配偶者については、
・1億6,000万円
・基礎控除額は3,000万円+法定相続人の数×600万円
どちらか金額が多い方まで軽減措置がありますが、子どもにはありません。夫婦2人とも亡くなった時は、子供に相続税が課税される可能性が高くなるので預貯金などの現金資産は生命保険を活用する方法があります。
生命保険には法定相続人数×500万円が非課税となり、この仕組みを活かし、保証が一生途切れることのない終身保険に退職金などの現金資産を活用して一時払いで加入することもできます。一時払い終身保険は健康状態にかかわらず加入できるので死亡時に、配偶者が生存していた場合でも子供1人当たり500万円の資産を移転することができます。
相続に関しては退職金控除や小規模住宅地の評価額減税制度など様々な制度があるため、一度、プロのプランナーに相談するのがよいと思います。
医療保険の内容を確認しましょう!
医療保険は日々進歩しており、新しい医療技術・制度に合わせて毎年の様に新しい保険商品が誕生しているので、長い間保険の見直しをしていない人はこんな補償もあるのか、など多くの方が驚かれます。
最近では入院給付金など入院時に1日当たり数千円~数万円が給付される商品が一般的になっているので、長期入院になると高額になりがちなベッド代の差額や、先進医療にも対応する商品も販売されています。退職時に一度、プロのプランナーに相談し、見直すと良いでしょう。
保険会社主導で押し売りされた保険に加入していないかの確認をしましょう!
保険会社の営業員から保険に加入していた場合は、保険会社の利益優先で加入させられていたり、押し売りに近いようなことをされたりしている場合もあるので確認をしてみましょう。若いうちに介護保険の加入を迫られたような例もあります。
最近では郵便局の保険の押し売りや契約内容の変更など、本人の知らない間に変更されている場合もあるので、プロのプランナーに相談し、確認してもらいましょう。
退職後の保険料についてのまとめ

健康保険料は自分の収入により加入できる保険が変わるので、退職前に国民健康保険窓口に聞いたり、退職後に会社で必要な書類を準備してもらったりしておくとスムーズに処理ができます。
生命保険なども退職後の収入や今までと同じ補償内容で良いのかをもう一度、プロのプランナーに相談するなどして見直すと良いでしょう。